予算9分

新規事業支援の費用はどう決まる?支援範囲・契約形態・見積書の見方

金額だけを比べると、調査・開発・広告費などの範囲差を見落とします。見積もりを同じ条件に分解する方法をまとめました。

新規事業支援の作業範囲と予算を整理する様子
AINAVI INSIGHTS / NEW BUSINESS 07

新規事業支援の見積もりは、会社によって金額だけでなく、含まれる仕事が違います。市場調査だけの提案と、LP制作、広告運用、顧客インタビュー、MVP開発まで含む提案を総額で比べても、判断を誤ります。費用を見るときは、「何人が動くか」より先に、「どの判断をするために、何を確かめるか」をそろえることが大切です。この記事では、費用を左右する要素、契約形態、見積書の読み方を実務の順番で整理します。

新規事業支援に、一つの相場がない理由

新規事業支援という名前の中には、数時間の壁打ちから、数か月の市場検証、システム開発を伴う長期プロジェクトまで含まれます。同じ「市場調査」でも、公開資料を整理する場合と、対象者を集めてインタビューし、提案への反応まで確かめる場合では、必要な人と時間が異なります。

また、新規事業では、開始時点で最終仕様が決まっていないことが珍しくありません。調べた結果、当初想定した顧客が違うと分かることもあれば、システムを作らず手作業で先に検証できることもあります。決まっていない範囲をどう扱うかによっても、契約と費用は変わります。

公開ページ上の料金表示にも違いがあります。たとえば、Radineerの新規事業コンサルティングは複数プランの開始価格を掲載しています。一方、TOMAの新規事業開発コンサルティングは目的に応じた個別見積もりと案内しています。表示方法の違いだけで良し悪しは決まりません。公開プランでも作業範囲の確認が必要で、個別見積もりでは比較条件を自社でそろえる必要があります。

総費用は5つに分けて考える

見積書に書かれた支援料だけが、新規事業を進める費用ではありません。広告媒体へ払う費用、調査対象者への謝礼、分析ツール、社内担当者の時間なども必要です。最初に全体を分けておくと、提案ごとの含む・含まないを確認しやすくなります。

新規事業支援の総費用を構成する5項目
  1. 支援チームの費用戦略、調査、進行、制作、分析などの専門人材
  2. 制作・開発費LP、デザイン、試作品、MVP、システム環境
  3. 市場へ出す費用広告媒体、営業リスト、イベント、調査対象者への謝礼
  4. ツール・データ費分析、CRM、調査データ、クラウド、外部サービス
  5. 社内の稼働意思決定、顧客紹介、確認、法務・情報システム対応
見積書に含まれない項目もあります。契約費と事業全体の検証予算を分けて管理します。

予備費も考えておきます。ただし、「何が起きるか分からないから一律に上乗せする」という意味ではありません。顧客仮説が変わった場合、追加インタビューを行う場合、MVPへ進む場合など、分岐ごとに費用を分け、承認するタイミングを決めます。

費用を大きく左右する6つの要素

1.現在地と不確実性の大きさ

顧客と課題が決まり、利用場面も確認できている案件と、「何か新しい収益源を作りたい」という段階では、最初に必要な仕事が違います。前者はMVPや販売検証へ進みやすい一方、後者は自社資産の整理、候補市場の調査、顧客への聞き取りから始めます。

構想が曖昧だから必ず高くなるとは限りません。大規模開発へ進む前に、短い調査フェーズだけを切り出す方法もあります。重要なのは、分からない部分を固定仕様として見積もらないことです。

2.調査と顧客検証の深さ

公開統計、業界資料、競合サイトを整理するデスクリサーチは、広い市場を把握するのに向きます。しかし、顧客がいつ困り、今何で代用し、誰が予算を決めるかは、会話や行動を見なければ分からないことがあります。

インタビューを含む場合は、対象条件の設計、候補者の募集、日程調整、実施、記録、分析までのどこを支援会社が担当するかで費用が変わります。件数だけを比べず、利用者、決裁者、導入審査者など、必要な立場へ聞ける設計かを確認します。

3.チーム構成と稼働方法

一人のアドバイザーが定例会に参加する形と、事業責任者、リサーチャー、マーケター、デザイナー、エンジニアが動く形では費用が違います。人数が多い方が常に良いわけではありません。今の論点に必要な役割だけが入り、情報をまとめる責任者がいるかが重要です。

担当者の稼働も、月数回の会議、一定時間の準委任、決めた成果物の制作など複数あります。「専任チーム」という言葉だけで判断せず、各担当者の想定稼働、会議外で行う作業、レビュー方法を確認します。

4.制作と開発の範囲

検証用LPは、既存テンプレートで一枚作る場合と、複数の顧客層・訴求を比較できる構成にする場合で工数が変わります。MVPも、既存ツールの組み合わせ、画面モック、手作業を含むサービス提供、独自システム開発では費用が異なります。

開発では機能数だけでなく、認証、決済、外部サービス連携、データ移行、セキュリティ、利用者権限、運用環境が影響します。初期見積もりに保守、監視、障害対応、クラウド利用料が含まれるかも分けます。

5.集客・営業と計測の範囲

広告運用費と広告媒体へ支払う費用は、通常は別の項目です。LP制作費にアクセス解析や問い合わせ計測が含まれない場合もあります。個別営業なら、顧客リストの作成、メールや電話、商談同席、記録の分析を誰が担当するかを確認します。

広告費を多く使えば、必ず正しい答えが早く出るわけではありません。対象顧客が少ないBtoB事業では、既存顧客への提案や個別インタビューの方が適する場合があります。媒体費ではなく、検証したい仮説に合った到達方法を選びます。

6.社内の意思決定と準備

支援会社が制作を進めても、原稿確認、法務審査、既存顧客への連絡、広告表現の承認に数週間かかれば、期間と費用が延びます。契約前に、事業責任者、日常の窓口、最終決裁者、確認期限を決めます。

一方で、急ぐために確認を省けばよいわけではありません。個人情報、業法、既存ブランドへの影響など、必要な審査は早い段階で関係者へ共有します。後から全面修正するより、制約を先に出す方が費用を抑えやすくなります。

契約形態ごとの向き・不向き

契約・料金の形特徴向いている場面注意点
スポット相談時間や回数を決めて助言を受ける特定論点の壁打ち、第三者レビュー相談後に実行する人を社内で確保する
成果物型調査書、戦略、LPなど納品物と金額を決める必要な成果物と条件が比較的明確仮説変更時の仕様変更条件を決める
月額伴走型一定期間、優先順位を変えながら進める調査と検証を往復する初期段階稼働量、会議外の実務、最低期間を見る
準委任型の開発チームや人の稼働に対して支払う検証結果に応じて開発範囲を変える進捗、品質、優先順位を共同管理する
請負型の開発決めた仕様と納期で成果物を完成させる要件と受入条件が明確仕様が変わる場合の追加費用を確認する
成果報酬型合意した成果に応じて報酬が発生する成果の定義と寄与を明確に測れる売上以外の要因、計測期間、途中解約を定める

新規事業初期は、仮説変更が起きやすいため、すべてを固定成果物にすると柔軟性が下がることがあります。反対に、月額伴走で何をするかが曖昧だと、会議だけで期間が過ぎます。調査や検証は伴走型、仕様が固まった制作は成果物型というように、工程で契約を分ける方法もあります。

見積もりは3つの支援範囲に分けると比べやすい

調査・判断材料まで

事業テーマ、市場、顧客、競合、収益仮説を整理し、次の検証計画を作る範囲です。経営会議の前に候補案を比較したい場合や、まだ顧客へ出す案がない場合に向きます。調査後のLP制作、営業、開発を誰が行うかは別に決めます。

市場へ出して反応を見るまで

調査に加えて、顧客インタビュー、検証用LP、広告または個別営業、計測、分析、改善までを含みます。成果物はページだけではなく、どの顧客がどの提案に反応し、次に何を変えるかという判断記録です。

AINAVIが案内する3ヶ月の支援もこの考え方を基本にしています。具体的な範囲はAINAVIの新規事業支援をご確認ください。

MVP開発まで

実際に使ってもらわなければ重要な仮説を確認できない場合は、MVPを含めます。どの機能を作るかではなく、どの顧客行動を確認するために必要かを決めます。検証前から完成版の仕様を入れると費用が大きくなるため、調査・需要検証と開発の承認を分ける方法が有効です。

段階ごとに投資判断を分ける
判断1調査後に、顧客へ提案する価値があるか
判断2市場の反応を見て、MVPへ進むか
判断3MVPの利用を見て、開発・販売へ追加投資するか
最初に全予算を確定する場合も、各段階で使う上限と、次へ進む条件を分けておきます。

見積書で確認したい項目

項目名が同じでも内容が違うため、「一式」の金額だけで判断しません。分からない項目は、値下げ交渉の前に作業内容と成果物を聞きます。

項目確認する内容見落とすと起きること
目的・期間開始日、判断日、終了条件調査や伴走が延長され続ける
担当体制実担当、責任者、稼働量、外部委託提案時と異なる体制になる
作業範囲助言、実作業、自社側作業の区分社内担当者の負担が想定を超える
成果物形式、数量、元データ、修正回数納品後に編集・再利用できない
広告・調査費媒体費、謝礼、外部データの扱い契約後に別予算が必要になる
開発環境クラウド、ドメイン、ツール、保守月々の運用費が見積もり外になる
権利・アカウント著作権、ソースコード、名義、権限契約終了後に運用を移せない
変更条件優先順位変更、追加費用、承認方法仮説変更のたびに予算が膨らむ
終了・引き継ぎ解約、データ出力、資料、残作業知識と履歴が支援会社に残る
  • 消費税、交通費、外部ツール費を含むか確認した
  • 広告運用費と広告媒体費を分けた
  • 顧客候補の募集・謝礼・日程調整を誰が負担するか決めた
  • LPの文章、デザイン、実装、計測、サーバーを分けて確認した
  • MVPの保守、監視、クラウド費、追加開発を確認した
  • 定例会以外の作業と連絡可能な範囲を確認した
  • 社内に必要な稼働と確認期限を見積もった
  • 仮説が変わった場合に、作業を入れ替えられるか確認した
  • 契約後に自社へ残るデータと権限を明記した

相見積もりは、総額ではなく条件をそろえる

候補会社へ同じ背景、現在地、判断したいこと、期間、社内体制、予算条件を伝えます。そのうえで、各社に「推奨範囲」と「最低限の範囲」を分けてもらうと、削った場合の影響も分かります。

一社が顧客インタビューを含み、別の会社が公開情報の調査だけなら、調査費を横並びにしません。同様に、LP制作に計測が入っているか、広告費が含まれるか、MVPが画面モックか動くシステムかをそろえます。

支援会社の選び方と質問項目は、新規事業支援会社の選び方にまとめています。

後から増えやすい費用と負担

社内担当者の稼働

支援会社へ依頼しても、顧客や業務の知識、社内調整、最終判断は社内にあります。担当者が既存業務と兼務し、確認が夜間に偏るようなら、外部費用を増やさなくてもプロジェクトは遅れます。会議時間だけでなく、資料確認、顧客紹介、インタビュー参加、意思決定の時間を確保します。

公開後の運用・保守

LPやMVPを公開すると、問い合わせ対応、個人情報管理、障害対応、更新、セキュリティ、クラウド費が発生します。検証期間だけ使うものと、その後も事業資産として残すものを分けます。短期検証では簡易な仕組みが合っていても、継続利用するなら作り直しが必要な場合があります。

判断を先送りした手戻り

誰向けか決まらないまま文章や画面を作ると、確認のたびに全体が変わります。細かい修正回数を減らすより、顧客、課題、価値、検証する行動を先に合意した方が手戻りを減らせます。

判断の質を落とさず費用を抑える方法

最初の問いを一つに絞る

市場、価格、機能、販売方法を一度に確定しようとすると、調査も制作も大きくなります。次の投資を止めている問いを一つ選び、その答えに必要な活動を優先します。

既存顧客と既存資産を使う

新しい調査対象者を集める前に、既存顧客から繰り返し聞く相談、失注理由、問い合わせ記録、営業担当者の知見を整理します。新規事業向けにそのまま使えるとは限りませんが、仮説を絞る材料になります。既存のWeb基盤、CRM、デザイン部品も、安全に再利用できれば初期費用を抑えられます。

工程ごとに承認を分ける

調査、需要検証、MVP、本開発を一括で発注せず、次へ進む条件を置きます。条件を満たさなければ必ず中止するという機械的な運用ではなく、何が外れたかを確認し、変更案と追加費用を見て判断します。

アカウントとデータを自社に置く

自社名義で広告、分析、ドメイン、クラウド環境を管理すれば、支援会社を変える場合もデータを引き継ぎやすくなります。権限設定やセキュリティ管理は必要ですが、同じ計測を最初から作り直す費用を避けられます。

費用で起きやすい3つの失敗

最安の総額だけで選ぶ

安い提案に顧客検証や計測が含まれていなければ、公開後に「反応がなかった」以上のことが分かりません。必要な作業が少ないから安いのか、同じ作業を効率良くできるから安いのかを分けます。

初回から完成版の計画を発注する

顧客の反応を得る前に、詳細な事業計画、ブランド、全機能、本格広告を一括で作ると、前提が変わった際の修正範囲が広がります。後で必要になるものでも、今の判断に使わないなら次の段階へ分けます。

月額伴走の中身を確認しない

柔軟な伴走契約は新規事業と相性がよい一方、優先順位と実作業が曖昧だと、毎月の報告会だけになります。月初に確かめる仮説、週次の活動、月末の判断を置き、翌月に同じ課題を持ち越さないようにします。

新規事業支援の費用についてよくある質問

予算が決まっていなくても相談できますか

相談はできます。その場合も、使える上限を完全に伏せるより、調査まで、需要検証まで、MVPまでのどこを想定しているかを伝えると現実的な案を比較できます。支援会社には、推奨案と範囲を絞った案の違いを説明してもらいます。

広告費は支援費に含まれますか

会社と契約によって異なります。運用作業への報酬と、広告媒体へ支払う費用を分け、アカウントの名義、請求先、上限、停止権限を確認してください。制作や計測が別料金の場合もあります。

定額と個別見積もりはどちらがよいですか

定額は範囲が合えば比較しやすく、個別見積もりは案件へ合わせやすい特徴があります。どちらでも、含まれる作業、成果物、自社側の負担、変更条件が明確なら比較できます。

成果報酬なら安全ですか

成果の定義が明確な場合には選択肢になりますが、新規事業の売上は商品、営業、価格、供給、社内承認など複数の要因に左右されます。何を成果とするか、支援会社の寄与をどう測るか、計測期間、広告費、途中で方針を変えた場合を契約前に決めます。

費用は、次の判断に必要な仕事へ分解する

新規事業支援の費用は、会社の規模だけでなく、現在地、調査の深さ、実行範囲、チーム、制作・開発、集客方法によって決まります。相場の数字を先に当てはめるより、支援後に何を決めたいかを明確にし、そのための仕事を分解してください。

見積書では、支援料、外部費用、社内稼働を分け、成果物とデータの所有、変更条件、終了時の引き継ぎまで確認します。安いか高いかではなく、次の投資を判断できる証拠が残るかで評価することが大切です。