「原状回復の単価表がほしい」で検索した人へ
最初に、期待とずれることを書きます。この記事に「クロスは○○円/m²」という相場表は載せません。
載せない理由は、載せても使えないからです。他社の単価をそのまま使うと、多くの場合こうなります。
- 高すぎて失注する:相手の仕入れが自社より安ければ、写した単価では勝てない
- 安すぎて赤字になる:相手の職人単価が安ければ、写した瞬間に利益が消える
どちらも、単価がその会社の原価構造の上に成り立っているからです。写せるのは構造だけで、数字は自社で埋めるしかありません。
この記事では、その「構造」と「埋め方」を具体的に書きます。
見積単価は4つの層でできている
クロス張替 1m² を例にすると、単価はこう分解できます。
| 層 | 中身 | どこから取るか |
|---|---|---|
| ① 材料費 | クロス本体+副資材(糊・パテ)+ロス率 | 仕入伝票 |
| ② 施工手間 | 歩掛 × 職人の日当 | 自社の施工実績 |
| ③ 経費 | 運搬・駐車場・養生・廃材処分・現場管理 | 実費の平均 |
| ④ 粗利 | ①〜③の合計に乗せる利益 | 経営判断 |
※上図の金額は構造を示すための例です。自社の数字に置き換えてください。
他社の単価表を写しても使えないのは、①〜③が会社ごとに違うからです。仕入先も、職人の日当も、現場までの距離も違う。だから同じ工事でも適正単価は変わります。
① 材料費:最も精度を上げやすい層
ここは伝票を見れば分かります。最初に手をつけるべき層です。
- 直近3ヶ月の仕入伝票から、主要材料の単価を拾う
- 副資材(糊、パテ、コーキング)を材料費に含めるか、経費に回すかを決める
- ロス率を決めて乗せる
ロス率の考え方はクロスの面積計算の記事で詳しく書いていますが、要点は「実面積では発注できない」ということです。割り付けの端材、柄合わせ、施工の余長で必ず余分が出ます。
自社のロス率を知る方法:過去の現場で「拾った数量」と「実際に発注した数量」を突き合わせてください。その比率が実績値です。感覚で10%と置くより、はるかに正確です。
② 施工手間:歩掛が命
ここが単価表の質を決めます。そして最も属人化している層でもあります。
計算式はシンプルです。
施工手間の単価 = 職人の日当 ÷ 1日あたりの施工量(歩掛)
クロス職人の日当が28,000円、1人1日で50m²張れるなら、28,000 ÷ 50 = 560円/m² です。
歩掛は自社で持つ
公表されている歩掛の資料もありますが、実際の数字は現場条件で大きく動きます。
- 空室か、居住中か
- 養生の手間(マンションの共用部を通るか)
- 部屋の形状(開口部が多い、天井が高い、和室)
- 下地の状態(パテ処理がどれだけ要るか)
だから、自社の実績から出すのが最も確実です。「あの現場は職人2人で1日、面積は○m²だった」という記録が3〜5件あれば、実用的な歩掛が出ます。
記録が残っていない場合
多くの会社で、この記録がありません。頭の中にはあるが、数字として残っていない。
その場合はこれから3ヶ月、面積と人工だけ記録してください。項目は2つで十分です。「その現場の数量」と「かかった人工」。この2列があれば歩掛が出ます。
この線引きをそのまま設計にしたのが「現調君PRO」です
現調君PRO は、内装・原状回復に特化した現調スキャン&見積もり作成ツールです。iPhoneのスキャンで壁・床・天井・開口部を数量化し、自社の単価マスタから見積もりのたたき台まで自動生成します。
一方で、スキャンの値と人の補正は分けて管理し、最終的な確定は必ず人が行う設計です。「AIが全部決める」のではなく、「変換作業は機械、判断は人」を製品側で担保しています。
③ 経費:単価に入れるか、別項目にするか
運搬費、駐車場代、養生材、廃材処分、現場管理の人件費。これらの扱いは2通りあります。
| やり方 | 向いている場合 | |
|---|---|---|
| A. 単価に含める | 各項目の単価に按分して乗せる | 小規模で件数が多い。見積書をシンプルにしたい |
| B. 別項目で計上 | 「諸経費」「廃材処分」として一式計上 | 金額が大きい。施主に内訳を示す必要がある |
原状回復ではB(別項目)が多い印象です。廃材処分は量で変動しますし、管理会社への提出時に内訳を求められることがあるためです。
ただし、駐車場代のように現場ごとに変わる小口の費用まで別項目にすると、見積書が煩雑になります。金額の大きいものだけ別項目にし、残りは単価に按分するのが現実的です。
④ 粗利:ここだけが経営判断
①〜③は「調べれば決まる数字」ですが、④だけは違います。何%乗せるかは、受注戦略そのものです。
判断材料になるのは次の点です。
- その取引先の継続性:単発か、月に何件も来るか
- 支払いサイト:入金が遅ければ資金繰りのコストが乗る
- 手離れの良さ:クレーム対応や手直しが多い先か
- 繁閑:職人が空いている時期か、逼迫している時期か
ここで注意したいのが、粗利率と粗利額の違いです。
粗利率20%でも、原価が10万円なら粗利は2万円、原価が3万円なら6千円です。小口の現場が多い原状回復では、率だけで判断すると1件あたりの利益が残りません。「1件あたり最低いくら残すか」という額の下限も持っておくべきです。
最初に作るべきは20項目でいい
全項目を揃えようとすると終わりません。頻出項目から始めてください。原状回復なら、次の20項目前後で大半の案件がカバーできます。
| 分類 | 項目 | 単位 |
|---|---|---|
| 内装 | クロス張替(量産品)/クロス張替(1000番台)/天井クロス | m² |
| 床 | CF張替/フロアタイル/クッションフロア撤去 | m² |
| 造作 | 巾木交換/見切り材 | m |
| 下地 | パテ処理/石膏ボード部分補修/ベニヤ下地 | m² または箇所 |
| 建具 | 襖張替/障子張替/網戸張替 | 枚 |
| 清掃 | ハウスクリーニング/エアコンクリーニング/レンジフード | 一式 または台 |
| 処分 | 廃材処分/残置物撤去 | 一式 または m³ |
| その他 | 養生/諸経費 | 一式 |
この表を埋めるのに、慣れていれば半日もかかりません。完璧を目指さず、まず埋めて、案件ごとに直していくのが続くやり方です。
単価表は「作って終わり」ではない
作った単価表は、放置すると必ずずれます。
- 材料費:仕入価格が変わる。年1回は見直す
- 施工手間:職人の日当が上がる。改定時に反映する
- 歩掛:実績が溜まるほど精度が上がる。半年ごとに検証する
とくに近年は材料費と人件費の変動が大きく、2年前の単価表をそのまま使っている会社は、気づかないうちに利益率が落ちています。見直しの時期を決めて、カレンダーに入れておくことをおすすめします。
単価表があると、見積もりが仕組みになる
単価表を整えると、副次的な効果があります。見積もりが担当者から離れることです。
いま見積もりが特定の人にしか作れないのは、その人の頭の中にしか単価と段取りがないからです。表に出せば、他の人でも同じ見積もりが作れます。新しく入った人の戦力化も早くなります。
そして、数量が自動で出る仕組みと組み合わせると、見積もり作成そのものが速くなります。数量 × 単価マスタで明細が生成されるので、人がやるのは確認と調整だけになります。
現調君PROには単価マスターの編集機能(CSV取込対応)があります。すでにExcelで単価表を持っているなら、そのまま取り込んで使い始められます。見積もり作成全体の効率化については本編記事で工数と費用対効果を試算しています。
よくある質問
Q. 原状回復の単価相場を教えてもらえませんか?
相場を提示することはできますが、そのまま使うと失注か赤字のどちらかになります。仕入先・職人単価・現場条件が会社ごとに違うためです。この記事の4層構造に沿って、自社の数字を入れてください。
Q. 歩掛のデータがありません。どうすればいいですか?
これから3ヶ月、現場ごとに「数量」と「かかった人工」の2列だけ記録してください。3〜5件あれば実用的な歩掛が出ます。公表資料の数値は出発点としては使えますが、現場条件で大きく動くため自社実績に置き換えるべきです。
Q. 粗利率は何%が適正ですか?
一律の正解はありません。取引先の継続性、支払いサイト、手離れ、繁閑で変わります。原状回復のような小口案件では、率だけでなく「1件あたり最低いくら残すか」という額の下限も決めておくことをおすすめします。
Q. 単価表はどれくらいの頻度で見直すべきですか?
材料費は年1回、職人の日当は改定のたび、歩掛は半年ごとが目安です。材料費と人件費の変動が大きい時期は、放置すると利益率が静かに落ちます。
Q. Excelで作った単価表をそのまま使えますか?
CSV取込に対応したツールであれば、そのまま取り込めます。既存の表を作り直す必要はありません。
まとめ
- 他社の相場は写せない。写せるのは構造だけ
- 単価は4層。材料費・施工手間・経費・粗利
- 材料費から着手する。伝票を見れば分かるので精度が上がりやすい
- 歩掛は自社実績で持つ。数量と人工の2列を記録するだけで出る
- 粗利は率と額の両方で見る。小口案件は率だけだと利益が残らない
- まず20項目。完璧を目指さず、案件ごとに直していく
現調君PRO の無料トライアル受付中
内装・原状回復に特化した現調スキャン&見積もり作成ツールです。iPhoneのスキャンから、壁・床・天井・開口部の数量化、図面の補正、音声メモの見積反映、自社単価での見積書発行(PDF/Excel/CSV)までを1本の流れにしています。
- 専用機材の購入は不要。LiDAR搭載のiPhone Pro / iPad Proが1台あれば、次の現調から始められます
- 月額4,200円(1アカウント・税別)から。まずは1人から試せます
- トライアル後に契約する義務はありません
登録は約1分。その場でトライアルIDを発行します。
